三高菖吉は偏った口コミに頭を悩ませていた
三高菖吉は、顧客からの偏った口コミに頭を悩ませていた。
ゲストハウスを始めて5年。オーナーの菖吉は、客たちがGoogleに書き込むレビューに頭を悩ませていた。彼の基本的な運営方針は、昔の羊飼いのように、「みんな自由にやってくれ」という放牧スタイルだった。老舗旅館がやるような、細部まで行き届いたおもてなしを目指すのではなく、簡素なサービスに留めようとしていた。実際に菖吉は、日中に宿を空けることもあったし、所用を客に任せることもあった。それなのに客たちが残す口コミは、ものの見事に五ツ星(大満足)ばかりで、総合得点が98点という驚異的な数字が出てしまった。
やめてくれ。そんなことをされては、みんなが過剰に期待をしてしまう。俺はこんなつもりで始めたんじゃない。高評価を付けられるたびに、菖吉は大声で叫びたくなった。せめて中の上くらいに落ち着けるために、わざと客に冷たくしたこともあった。あるいは聞き分けの良さそうな客に、「低めにレビューしてもらえないか」と事情を説明したこともあった。それでも彼らは、まるで菖吉に嫌がらせをするかのように、次々と最高評価を残し、さらに総合点が一ポイント上昇してしまった。
彼の宿を訪れるとき、私はそのような情報(あるいはオーナーのご心労)を聞いていたので、過剰な期待は持たないようにと心がけていた。そしてもし何か気に障ることが起きたなら(たとえば蚊に刺されたなど)、1か2の評価を辛口な意見と共に、Googleに報告して差し上げようと考えていた。初日の菖吉は、絶えない海外からの宿泊客に忙殺されており、とても疲れている様子だった。夜に酒を勧めても、「今日は疲れているので一杯だけお付き合いします」と、投げやりな様子で答えた。よし、この調子なら1.5当たりが妥当かもしれない。
しかし、暖炉の前で酒を飲み始めると、私はすぐ彼を好きになってしまった。菖吉は聞き上手だったし、次々と面白い話も聞かせてくれた。博識な読書家で、物事の本質を追う思考の深みがあり、ユーモアにも富んでいた。結局、酒の瓶が空になる夜中の1時まで話し込み、私は高級ホテルでは決して味わえない記憶に残る夜を過ごした。
翌日、菖吉が「簡単なご飯を作りますよ」と言ってくれたので、お願いすることにした。余りもので適当な炒め物でも作れば良いものを、彼は何時間もかけて仕込みをし、専門店も顔負けの本格的なカレーを用意してくれた。付け合わせのトルティージャも、ちょっとした名物になり得る出来だった。付け加えるなら、水回りも綺麗で、内装に遊び心があり、書斎の品揃えにも哲学を感じた。
そういうわけで、私は今から最高評価を残そうと思う。色々とよくしてくれた菖吉には申し訳ない気持ちでいっぱいだが、嘘をつくわけにはいかないのだから。
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