男性がおごるべきなのか
肖像作家ナナシへの質問
奢り奢られ論争という言葉がありますが、デート代は男性が支払うべきだと思いますか。女子の立場としては、異性として意識してもらいたいなら、エスコートしてもらいたいものです。ナナシさんは人から奢られてばかりのようですが、恥ずかしくないのでしょうか。
東京都20代女性、あざとくて御免さん
奢られてばかり…たしかにその通りかもしれません。私は人さまに自慢できるような技能は持ちあわせておりませんが、こと《奢られること》に関しては一家言があります。総額にすればちょっとした資産になることでしょう。おそらくは、他者の心の琴線に「なにかを与えてやりたい」と思わせる素質があるのだと思います。公園にいる腹を空かせた鳩のように。あるいは、海岸に打ち上げられたアザラシのように。ひとつ断っておきたいのは、私は自分の口から奢ってくれと言ったことはありません。ただ差し出されたものを受け取っているだけで、あざとく貢がせているわけではありません。つまりはパブロフと犬の関係性です。
男性が奢るべきか、という問いに対しては「どちらでもいい」と考えています。求められればこちらが持ちますし、払わせてと言われればパブロフの犬に成り下がります。ただし、それはあくまで声をかけてもらったときの話であって、こちらから誘ったなら別です。若い女性に限らず、はるか目上の男性であっても、(相手が不快に感じないようであれば)すべてこちらで完結させます。こちらの都合で飲みに付き合ってもらい、なおかつ金銭的な負担まで強いるというのは、どことなく気持ちが落ち着かないからです。
もちろん相手によっては、あなたみたいな無職に奢られるなんて御免、という表情を浮かべられる方もいます。そうしたときには、支払いをさせていただく理由をお伝えします。「ここは男が出すもの」とか「女性に払わせるわけには」みたいなのは気持ちが悪いので、有無をいわさぬ合理的なものが好ましいでしょう。「乞食と托鉢は似て非なるものです。乞食はお金をうけとる側がお礼をいいますが、托鉢はお金を払わせていただく側がお礼をいいます。私は乞食ではありませんので、ここは持たせてください」というように。
食後に「この後はどうしましょう」とモタつくのも好ましくはありません。デザート・ワインを飲み始めるころには、すでにタクシーの手配が済んでいるのが宜しいでしょう。お見送りの際に、右手で手土産を渡しながら、左手で運転手にお金を払います。手元を見せないように器用にやらなければなりませんので練習が必要ですが、技術の詳細については、ラリー・ジェニングスのカードマジック入門を参考にしていただけると良いかと存じます。
〜体現している人物〜
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